「企業のメルマガ(メールマガジン)を購読したことはありますか?」
登録された顧客やユーザーのメールアドレスに、伝えたい情報をメールで配信するメルマガは、マーケティング手法として広く使われています。
今回は、メルマガについて、配信メリットや注意点などの基礎知識を解説します。
メルマガとは
メルマガとは「メールマガジン」の略称で、企業や自治体、サイト運営者などが希望者や顧客に対してEメールで情報発信をおこなうものです。
Webにおけるマーケティングの手法にはほかに、広告やSNS、YouTubeなどがありますが、これらは不特定多数の相手を対象としています。
それに対し、メルマガは送信する相手をメルマガ配信の希望者や顧客、特定の条件の相手などに絞り込むことができ、企業主体で距離の近い相手に情報を発信できます。
このため、メルマガは販売促進や営業のみならず、顧客との関係性を強化し、顧客の育成にも有効といえるでしょう。
メルマガ利用の目的
メルマガはおもに、「伝達」「送客」「販売促進」といった目的で使われます。それぞれどのようなことか、解説いたします。
伝達
伝達は、顧客やユーザーに知らせるべき情報を伝えるためのメルマガのことです。例としては、次のようなものが挙げられます。
- 会員登録完了、購入完了の通知
- 企業や団体からのお知らせ
- 商品やブランドに関するストーリー
- 商品やサービスに関する最新ニュース、メンテナンス情報など
おもな目的は顧客満足度の向上であり、また自社の商品やサービスに興味を持ち続けてもらうため、商品の情報や豆知識、コラムなどの有益な情報を発信するものです。
送客
送客は、メルマガから自社の商品やサービスに興味をもってもらい、サイトや店舗などに訪問してもらうことを目的とするメルマガです。
そもそも、サイトや店舗に送客する方法には次の3種類があります。
- プル型
- 検索エンジン経由など、ユーザーが興味をもって自ら探してたどり着くのを待つもの
- フロー型
- SNSなど、ユーザーが興味のある情報を比較検討し、たどり着くのを待つもの
- プッシュ型
- メルマガなど、興味のあるユーザーに直接情報を届けるもの
このなかで、唯一ユーザーに直接情報を届けられるのがプッシュ型であるメルマガです。ユーザーが興味をもちそうな内容を定期的に配信し、リピーター獲得や親近感、安心感をもってもらう効果に期待できます。
販売促進
販売促進は、キャンペーンやセール情報、新商品の情報など直接購買につなげる目的で配信するメルマガです。
よくある例としては、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのセール情報のメールがこれにあたります。メルマガからサイトに訪問してもらい、購入してもらうことが最終目的です。
メルマガを配信するメリット
メルマガの配信は、ほかのマーケティング手法と比較してどのようなメリットがあるのかをご紹介いたします。
コストを抑えられる
通常、販促活動は宣伝したい相手が増えるほどコストが大きくなります。
広告であれば期間や規模が大きいほどコストが掛かり、またダイレクトメールであれば、発送先が多いほど印刷や郵送に莫大なコストが掛かります。
しかし、メルマガの配信は一括でおこなえるため、配信先が増えてもコストはほとんど変わりません。
メルマガの配信には専用システムを導入するのが主流ですが、手動でメールを一斉送信することもできるため、テストでおこなうのであれば費用も掛かりません。
鮮度の高い情報を発信できる
テレビCMやチラシ、ダイレクトメールや広告など、販促手法の多くはユーザーに情報が届くまでに時間がかかります。
しかし、メルマガは企業側がメールの内容さえ作成できれば、いつでも即座に鮮度の高い情報を発信できます。
リアルタイムで話題になっている情報であれば、とくに注目されやすく、話題と合致する商品やサービスを宣伝すれば、購入にもつながりやすいでしょう。
ターゲットを絞った情報発信が可能
メルマガはユーザー全員への一斉配信だけでなく、ツールを使えば特定の性別や年齢、過去に商品を購入した顧客や、購入して半年経過した顧客など、ターゲットを絞った配信も可能です。
たとえば、60代男性が20代女性向けのコスメを宣伝されても興味をもちにくいように、人は自分と関係がなさそうな内容のメルマガは見ない人が多いです。
そこで、ターゲットを絞り込み、相手に適した内容のメールを送信すれば、興味や関心をもってもらいやすく、購入にもつながりやすくなります。
顧客との関係性の維持
人は日々、数多くの商品やサービスに囲まれており、数あるなかから自社の商品、サービスを選んでもらうには、自社のことを定期的に思い出してもらうことが重要です。
その点、メルマガは定期的に配信するものなので、単純接触効果を増やすことができ、顧客との関係性を維持するのに有効です。
また、メールボックスに届くので目につきやすく、SNSのように投稿した内容がタイムラインから流れて見られなくなることもありません。
また、メルマガで商品購入後の顧客に商品の活用方法やアフターサービスを伝えたり、気になる点や要望を募集したりすれば、顧客は親近感を感じ、好感度を高める効果もあります。
効果測定が可能
テレビCMやチラシなど、アナログな宣伝手法は効果測定しにくいという難点がありましたが、メルマガはツールを導入することで次のようなデータを収集できます。
開封型 | メールが開封された割合 |
---|---|
クリック率 | 本文のリンクがクリックされた割合 |
到達率 | 配信したメールが相手に届いた割合 |
たとえば、メールの開封率はメールのタイトルで興味を引けたかどうかが把握でき、またURLのクリック率からは、メール経由での購入などの効果測定が可能です。
このような数値を比較すれば、どのようなタイトルが開封されやすいか、どの程度読まれているのかが分析でき、メルマガの費用対効果を向上させるのに役立ちます。
メルマガの形式
メルマガの形式には、「テキスト」と「HTML」の2種類があります。それぞれの特徴やメリット、デメリットについてご紹介いたします。
テキスト形式
テキスト形式とは、文字通りテキストのみで構成された一般的なメルマガのことです。画像や文字装飾(太字、文字色の変更)はできないため、視覚的な訴求力は弱いです。
しかし、メールの作成に特別な知識は必要なく、記号や段落を使えば見やすくもできます。また、デバイスを選ばず閲覧できるのも特長といえるでしょう。
- 特別な知識がなくても文字入力だけで作成できる
- 手早くコンテンツを作成できる
- 受信者がどのデバイスで閲覧していても読みやすい
- 文章のみなので視覚的に訴求力が弱い
- メールの開封率やクリック率を測定できない
HTML形式
HTML形式とは、サイト内のページのように、画像や文字の装飾などを埋め込んだメルマガのことです。視覚的な訴求力が高く、また効果測定もできるのが大きな特長です。
ただし、受信する側のデバイスやメールソフトの設定など環境によって、表示が崩れる場合もあるため、その部分はデメリットといえます。
- 画像や装飾により目を引きやすく、文字だけで伝わりにくい情報も伝えやすい
- メールの開封率やクリック率を測定できる
- 作成にはHTMLの知識や画像などの素材が必要
- コンテンツの制作に時間がかかる
- デバイスや設定によって本文が表示されないこともある
メルマガの配信方法
メルマガを配信する方法には、おもにつぎの4種類があります。特徴についてご紹介いたします。
メール配信システム
メルマガの作成、配信に特化した便利な機能が多数搭載されているシステムです。
操作も分かりやすいものが多く、特別な知識がなくても、はじめてでもカンタンにメールの作成から配信までおこなえます。
有料のシステムが多いですが、予約配信や効果測定、配信する相手の絞り込みや迷惑メール振り分け防止といったさまざまな機能を利用できるため、企業のメルマガ配信に最適です。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーションとは、企業のマーケティング活動に関する業務を自動化し、業務効率や生産性を向上させる機能が充実したツールのことです。
メルマガ配信のみに特化したツールではありませんが、メルマガの作成や配信、ユーザーの管理、効果測定など配信に必要な機能も問題なく揃っています。
また、見込み顧客の自動抽出や、特定の顧客にセグメントして配信もできるため、マーケティング業務の効率化とメルマガ配信を組み合わせたい企業さまに最適です。
ただし、機能が充実していることもあり、メール配信システムより高額な場合が多いため、メルマガ配信のみをおこないたい場合はメール配信システムのほうがよいでしょう。
ExcelとOutlook
Excelで送信先のデータを管理し、Outlookでメールを作成、配信する方法です。手動で配信するためシステムを利用せず、無料でおこなえます。
Excelで顧客情報を管理し、送信したい条件に当てはまるアドレスを抽出して送信するため、特定の属性のユーザーに絞り込んで配信することもできます。
ただし、手動で管理するため入力漏れやミスが生じる可能性もあり、また受信拒否した人を外す手間など、管理する人数が増えるほど管理が煩雑になりミスが生じやすくなります。
BCC配信
メールシステムに搭載されているBCCの機能を使い、手動で配信する方法です。メールアドレスをBCC欄に記載することで、送信先を隠した状態で一斉送信できます。
システムを利用せず、無料でおこなえるのが特長ですが、ExcelとOutlookを使う方法と同様、送信相手が増えるほど管理に手間がかかり、誤ってCCに入力するなどミスが生じやすくなります。
また、一括送信で大量に配信をすると迷惑メール認定やスパム認定をされやすく、メール到達率が大幅に低下するおそれもあります。
メルマガを配信する上での注意点
メルマガを配信する場合、法律面でも配慮が必要になります。どのような部分に注意すればよいのかについて解説いたします。
特定電子メール法
特定電子メール法とは「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の略称で、迷惑メールを規制するための法律です。
特定電子メール法の対象は「特定電子メール」、つまり広告宣伝メールとなっており、おもに以下のようなルールが定められています。
- 事前にメール送信に同意したユーザー以外への送信禁止
- メール本文に送信者の氏名や名称、メールアドレスなどの表示義務
- 送信者情報を偽ることを禁止
- 受信を拒否したユーザーへの送信禁止
- メール受信を拒否する場合の「配信停止はこちら」を記載する義務
これらに違反した場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」または「行為者に対して罰則、3,000万円以下の罰金)」に処される可能性があります。
個人情報保護法
個人情報保護法とは、個人情報の権利利益の保護と、適正かつ効果的な活用の両立を目的とした法律です。
そもそも、個人情報の定義は「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」であり、メルマガ配信においては、氏名とメールアドレスが個人情報にあたります。
そのため、以下の点に注意して個人情報を適切に取り扱うことが求められます。
- メールアドレスの利用目的を事前に伝える
- 登録フォームなどメールアドレスを入力してもらう際に、入力されたアドレスに、メルマガ配信に利用する旨を伝え、同意してもらう必要があります。
- 個人情報を適切に管理する
- 氏名やメールアドレスなどの情報漏えいを起こさないために、データの保管に細心の注意を払い、セキュリティ対策を整備する必要があります。
著作権法
著作権法とは、著作物に関する著作者とそれに隣接する者の権利を保護する法律です。著作物とは、映画や写真など芸術作品のみならず、サイト上の文章や画像も含まれます。
メルマガを作成する際、オリジナルの内容であれば問題ありませんが、他者の作成した文章や画像などを使用したい場合、以下の点に注意が必要です。
- 他者の著作物を引用の範囲を超えて使用しない
- 他者の著作物を自分が作成したかのように発表しない
- 著作者の断りなく無断で転載しない
著作権を侵害した場合、著作者は損害賠償を請求でき「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」に処される可能性があります。罰金は法人の場合、「3億円以下」となります。
まとめ
メルマガを配信するメリットについて、以下のようにご紹介しました。
- コストを抑えられる
- 鮮度の高い情報を発信できる
- ターゲットを絞った情報発信が可能
- 顧客との関係性の維持
- 効果測定が可能
最近はSNSマーケティング、動画マーケティングに注力する企業も増えていますが、メルマガにも十分魅力的な特徴があります。
ひとつの販促手段に注力するのもよいですが、メルマガも合わせて活用することで、より多くの顧客をファンとしてつなぎ止めることができるかもしれません。