「リレーションシップマーケティング」とは、マーケティング用語の1つです。既存顧客との良好な関係づくりによって商品・サービスの満足度を上げ、長期的な利益を獲得するための手法です。関係性マーケティングとも呼ばれます。
ここでは、リレーションシップマーケティングの基本や具体的な手法、成功事例について紹介します。
リレーションシップマーケティングとは?
リレーションシップマーケティング(Relationship marketing 関係性マーケティング)とは、既存顧客と良好な関係を作って距離を縮め、長期的なリピーターになってもらうことを狙うマーケティング手法の1つです。1983年にアメリカのマーケティング学者レナード・ベリーにより提唱され、90年代に発展しています。
主な流れとしては、商品・サービスへのロイヤルティ(思い入れ)が高く、愛用者である顧客一人ひとりの属性を把握し、満足度が高まり続けるようアプローチを続けます。
売る側と買う側が親密になるよう、関係強化のためのマーケティングを促進します。新しいお客の獲得よりも、「1人のお客に何回もリピートしてもらう」ことを重視しています。そのため、すべての顧客へのアプローチや、ニーズ分析をするマスマーケティングなどとは異なるものです。
顧客1人が最終的に会社にもたらす利益をLTV(Life Time Value:生涯顧客価値)と呼び、リレーションシップマーケティングでは、LTVの上昇が目的です。このような考え方の根本には、「全体の2割である優良顧客が、売上の8割をあげている」という、パレートの法則が関係しています。
リレーションシップマーケティングのメリット
リレーションシップマーケティングを実施すると、次のような良い効果があります。
1人の顧客がもたらす利益を最大化できる
顧客がよろこぶサービスを行い、長いつきあいを継続します。すると、一定期間内の購入金額が上がり、長期的な利用につながるため、LTVを最大まで上げられる可能性が高まります。
コストカットしながら売上げアップできる
成熟した市場での新規顧客の獲得は難しく、コストもかかります。そこで、すでにいる顧客へ、日頃の感謝として特典を贈るなどのサービスを行います。
既存顧客を大切にし、長期的に利用してもらえるようアプローチするほうが効果も大きく、コストもかかりません。
口コミからの集客が期待できる
ロイヤルティが高い優良顧客は、知人への紹介やネットの口コミなどで、商品を広めてくれる可能性が高いです。
サービスに対して平均的に満足している顧客は、「あそこのサービスは良かった」という経験を3人に話すとされています。利用者からのお墨付きの口コミは効果が高く、集客に期待できます。
リレーションシップマーケティング実施の手法
リレーションシップマーケティングで顧客との関係を作るには、次のようなマーケティング戦略を活用したアプローチが効果的です。
データベースマーケティング
集めた顧客情報を管理・分析し、年齢などの属性で区分します。その属性に合った販促を行うことで、集客・売上げアップをめざします。
誕生日などに合わせてタイミングよく特典などを送るために、顧客関係管理システムのCRMを併用することもあります。
One to Oneマーケティング
メルマガなどの会員登録情報から、顧客の好みや価値観・状況の違いを把握し、各ニーズに合わせたアプローチを行います。一人ひとりの満足度アップにつながります。
サービスマーケティング
一定期間にサービスを行い、ファンになった顧客を、特別イベントなどに招待します。すると、さらに深い関係作りにつながります。
顧客へのアプローチ例
上記のような手法を使って「顧客との良好な関係」を深め、ニーズを探るために、例えば次のようなアプローチを行います。
- 成約後、お礼状を出す
- 誕生日や記念日に、バースデーカードや特典渡す
- ポイントが貯まったら割引する
- お役立ち情報を定期配信する
- 不便がないか、利用状況を確認する など
お礼や特典をもらうと、うれしいですよね。顧客の状況やライフイベントに合わせたサービスを提供し、満足度をアップさせます。
関係作りのためのツール例
関係作りのツールには、次のようなものが効果的です。
Web宣伝・サポート
メルマガやSNSでの情報発信、チャットでのサポートなど、タイムリーで手軽なやりとりがスマートフォンでもすぐできるため、満足度が上がりやすいツールです。
今後は、FacebookやTwitterなどの公式アカウントで顧客とコミュニケーションをとり、関係を深めること需要が増すでしょう。
電話サポート
電話でのアフターフォローでは直接的なやりとりができ、困ったときはすぐ解決できるという安心感にを生みます。
DM(ダイレクトメール)
購入者向けに、新商品や特典の案内をDMやFAXDMで送ります。誕生日割引など、喜ばれるプレゼントを定期的に受け取ってもらえます。
営業マンによるサポート
BtoBの場合、高価な取引かつ長期的な利用になることが多いため、スタッフによる直接のサポートを行い、顧客である企業からの信頼感を高めます。
リレーションシップマーケティングの成功事例
リレーションシップマーケティングに成功している企業の事例を紹介します。
Amazon
インターネット上で商品を販売するAmazonで買い物をすると、購入履歴から、おすすめ商品が表示されます。
顧客一人ひとりの履歴データに基づき、その人に合った情報を表示するこの手法も、リレーションシップマーケティングの1つです。様々なECサイトで活用されています。
ディズニーランド
90%という高いリピート率を持つアディズニーランドでは、リレーションシップマーケティングも行っています。その1つが、来場者のことを「顧客」と呼ばず、「ゲスト」と呼ぶという施策です。
ウォルト・ディズニーは、ディズニーグループに来てくれる人は一人ひとりが大切な「ゲスト」であり、「お客様」とひとくくりにして扱うべきではない、という考えを徹底していました。その信念は今も受け継がれ、根強いファンを獲得しています。
まとめ
リレーションシップマーケティングについて解説しました。お客様一人ひとりへのきめ細やかなサービスと心づかいは、リピーターになってもらうための重要なポイントです。
今はスマートフォンやSNSの浸透により、様々なアプローチを活用したリレーションシップマーケティングが可能です。
今後、アプローチのためのツールは増え、細分化していくでしょう。「自社の顧客はどんなサービスに喜ぶのか?」分析し、最適な戦略の実施が重要になります。